『エンジェル エンジェル エンジェル』梨木 香歩(新潮文庫) ’07 7/4

評価;A

高校生(おそらく)のコウコは、寝たきりに近い祖母の深夜のトイレ当番を引き受けることで熱帯魚を飼うのを許された。熱帯魚を飼い始めた日から寝たきりであった祖母が不思議な反応を見せるようになった。彼女はコウコと二人きりになると目を覚まし、少女のような表情で話をするようになったのだ。二人は互いを「コウちゃん」「さわちゃん」と呼び、親交を深める。
ネオンテトラを攻撃し殺すエンゼルフィッシュ、そしておばあちゃんの胸奥に眠る少女時代の切ない記憶が交錯する。
天使と悪魔の存在。そして神の感情。救われるのは誰なのか。

悪魔は自分が異端であることを、思考の浅い部分では認めてなくても、心の深い部分ではしっかり気づいていると思う。だからこそ正常な存在である天使を超えて、自分が正常なものになろうとする。それは神に愛されよう、または神を手に入れようとするからかもしれない。そのことに神は気付いているから、そのような方法しか選べなかった悪魔を「かわいそうだ」と言う。悪魔にとっては、それは異端である自分の存在を、自分にとって絶対的な存在である神が認めてくれた言葉。それは自分を救ってくれる至上の言葉になり得る。
悪魔は天使と同様神を愛していることには変わりないんですよ。でも、ちょっとその表現方法が極端なんです。きっと悪魔は不器用な天使なんですよ。
ルシファー(悪魔の親玉)の罪は嫉妬。今まで私は悪魔は人間に嫉妬したものだと思ってたけど、今回天使に嫉妬していたのかもしれないと思いました。自分がなることのできない正常なる者に対して。

というふうに、悪魔好きには楽しく読める本です。すごく間接的ではありますが、ルシファーがより一層可愛くなりました。(笑)

次は『彩雲国物語 はじまりの風は紅く』。

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